「バッファロー’66」という映画をご存知でしょうか? 刑務所帰りのやさぐれと行きずりの少女(クリスティーナ・リッチ)による刺激的でキュートなラブストーリーです。1998年米国公開。
ギャンブルで首の回らない主人公(ヴィンセント・ギャロ)は、マフィアの身代わりに刑務所行きになります。その間、両親には「政府機関で働いているエリート」と見栄を張り、心配させないよう嘘をつきます。(どうしようもない男!)
しかもようやく出所の日を迎え実家に帰る際、これまた「嫁さん連れて帰るわ」なんて嘘を重ねてしまったものだから、さあ大変。主人公は仕方なしにそこらにいた女子を誘拐して連れて帰る、なんて行動にでて・・・という展開です。
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ただ、このままでは「どこにおいしいものが?」と思ってしまうかも。ネタバレを避けて書かせていただくと、物語の佳境で主人公はヒロインのためにドーナツショップに寄り、彼女の好物であるホットチョコレート(ココア)を買って帰ります。ここ! ここです。
それまで気難しい顔ばかりの主人公が、誘拐相手との恋に浮かれてココアを買う。もうこのシチュエーションだけでココアよりも甘い気持ちが胸いっぱいに広がります。
浮かれに浮かれまくった彼はさらに、ドーナツショップのレジの前に置いてあったハート型のクッキーを自分を待つ彼女にだけでなく、店にいた客にまでごちそうする始末。「お前が食うためじゃない、お前の恋人にあげろよ!!」と大はしゃぎで、店員に「ハート形ってすっごく良いな、誰が考えたんだろうな!」と恋に浸りきったセリフ言うのです。
しかも、おじいちゃんの店員はこれまた素敵に「知らないけど、ロマンチックな誰かさんだろうよ」と返答。このやりとりもホント素敵!!!
物語の要所要所でホットチョコレートをねだるヒロイン。そのわがままをストレートにかなえることは少なかった主人公が、自ら彼女のことを喜ばせたい!という気持ちでアツアツのそれを買って走って帰る・・・なんともかわいらしい恋に落ちたメンズの姿ではありませんか。
この映画を観るなら、ホットチョコレートもしくはおいしいクッキーを片手にどうぞ!
ちなみに、主演のヴィンセント・ギャロはこの作品の監督・脚本・音楽、すべてを手がけています。自伝的作品でもあったことから一躍脚光を浴び、その後も「単館系」と呼ばれる作品で何作か話題を呼びました。
ヒロインは「アダムス・ファミリー」で黒髪おさげの不気味な女の子を演じたクリスティーナ・リッチだった、というのも話題でしたよね。彼女のチャーミングさがたっぷり堪能できるのも本作のポイントです。
コメディ要素もふんだんに盛り込まれていて、それでいて主人公の心の葛藤の描写は結構シリアス。いろんな味が含まれた面白い映画です。