タバコまわりの不安と嫌悪。世界の市場は伸びていた

居酒屋で酒をあおって帰宅すると、洋服のタバコ臭さが気になった。しかし、服についた臭いはどうにも好きになれない。最近は喫煙者も減ってきたし、臭いが気になりにくい電子タバコの利用者が増えたせいか、あまり意識することがなかった。老舗の大衆酒場は、いまだ紙巻きタバコが幅をきかせているようだ。

非喫煙者にとって、タバコは百害あって一利もない。電子タバコの拡大で臭いの問題は少なくなるのかもしれないが、受動喫煙、つまり求めてもいないのに吸わされるタバコは、嫌煙家でなくとも良い気分ではない。

かつてヘビースモーカーだった。出版社にいた当時、執筆者が禁煙したのに伴って半ば強制的にこちらも禁煙した。以来、一度も吸っていない。喫煙者にとって、酒を呑みながらタバコをくゆらすのが最高にリラックスできると知っている。だから、酒の席ぐらいでとくに咎めることはない。自分がやめた途端に反目するのも気が引けるのだ。

全く吸わなくなって5年ぐらいたつが、この間にタバコは楽しみにくいものになった。吸う場所が限られるし、値段もかなり高くなった。非喫煙者が占める飲み会も増えたので、タバコ喫みたちはすっかりマイノリティになった印象もある。まぁそれは、業種などによっても違うかもしれない。

喫煙者の中には、たくさん税金を払っているのだぞ! と御旗を掲げるかのように訴える人がいる。酒好きとしては、酒税の絡みから感覚的に同調するところもある。けれどそれは、さっさとそしてぽっくりと冥土に向かってくれなければ、医療費などで相殺されてしまう。タバコ好きも酒好きも、こっそり楽しんでいた方が世間の風当たりを回避できるのではないか。

ちなみに、日本国内のトップはJT(日本たばこ産業)である。かつての専売公社、国営企業はいまや日本よりも海外での事業規模が上回っている。ブランドや企業体の買収で海外規模を拡大し、世界で4位の位置につけている。

JTの事業別売上構成比

JTの事業別売上構成比(JTアニュアルレポートより)

紙巻きタバコの世界市場は、年間で約5.5兆本、金額換算すると約7000億ドルの市場だ。最大規模の中国市場が世界の40%を占めており、インドネシアやロシア、米国、日本がこれに続く。トップの中国はWHOの調査で吸い過ぎを指摘されたものの、国の進める禁煙キャンペーンもわずか数%の減少にとどまっている。中国でタバコは男らしさの象徴、そんなところも影響しているのかもしれない。

  • 5.5兆本/年
  • 7000憶ドル(約79兆円)

なお、中国でタバコを売るのは中国煙草総公司で、この専売企業が製造と流通、そして販売の全てのチャネルを独占している。中国煙草総公司は、中国の国営企業の中でも中央政府が直轄する企業だ。中央企業は、核や石油、電気といったエネルギー資源関連の企業や、航空や列車といった運輸、兵器、鉄鋼など100社近く存在する。中でも中国煙草総公司はもっとも売り上げを上げる企業の1つ。国内有数のドル箱、いや元箱企業となっている。

販売数量トップ10

販売数量トップ10(JT調べ、JTアニュアルレポートより)

ふたたび世界に目を向けると、中国以外の世界市場において、タバコ需要は減少傾向にある。一方、常習性のある嗜好品は需要減を値上げすることで、売上高としては上昇している。成熟市場においては減少傾向が強い。増税や規制強化のあおりを受けているのは日本に限られた話ではなく、欧州ではタバコの広告自体を禁じているようだ。

反対に新興国では需要が増加している。アジアや中東、アフリカは可処分所得が増えると、タバコの品質が上がり値段も上がる。このため世界全体でみるとタバコは大きな影響を受けておらず、税収に貢献している。

日本では加熱式タバコが広がりつつある。フィリップ モリスのiQOS(アイコス)、JTのプルームテック、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)のglo(グロー)などがそれにあたる。加熱式タバコの方が圧倒的に周囲への臭いの影響が少ない。健康への影響については、タバコ各社は紙巻きより安全であるとうたっている。

これに対し、呼吸器学会や禁煙系の組織は研究が足りないと指摘。実際のところはわからないが、タバコ各社は紙巻き時代に健康への影響をごまかしていた過去がある。自分が喫煙者だった頃、健康への影響を言われても「知っているよ、いちいちうるせぇ」と感じていた。タバコの健康への影響を喧伝しても、喫煙者よりも非喫煙者の方に響くのではないか。

排気ガスをまき散らすのはいかがなものか。
農薬まみれの野菜を売るのはいかがなものか。
洗剤を下水に流して海を汚すのはいかがなものか。

そうした懸念1つ1つをつぶしていければ、もしかすると幸せになれるのかもしれない。しかし、そうした懸念の1つ1つは、自分の不安な気持ちとともに嫌悪や憎悪を連れてくる場合がある。タバコの臭いが気体と粒子が絡み合い消えにくいのと同じように、不安と嫌悪は人の内側にこびりつく。

できることなら、すべての行いが自分の幸せにつながる方がいい。できることなら、なるべく他人を憎むことなく幸せに出会いたい。喫煙者は横暴で鈍感になりやすく、非喫煙者は嫌悪と排除をすぐに持ち出す。言葉も臭いも煙たがられる場合があり、それらは内側と外側にこびりつくのだ。

[Credit Title]
写真提供:ぱくたそ / 撮影:すしぱく / モデル:大川竜弥Max_Ezaki

 

津田啓夢

津田啓夢

エディター。0歳で単身渡娑婆。一喜一遊、 一期は夢よただ狂え。ワクワクを食べて生きる人。演劇→写真→アート→メディア。企画、編集、動画、執筆&撮影、イラストのほか、イベントや広告企画なども幅広く手がける。趣味は手ぬぐい集め(地味)。

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