定食屋の球宴:ピッチャー緑茶ハイ、打ち勝つ? 投げ勝つ? ツマミ打線を思案する

ふいに入った定食屋さんでお酒を楽しむことに。さて、今日はどういった試合を組み立てるか、だ。

まずは打ち勝つか、投げ勝つか。

この日の先発投手は予告通りの緑茶ハイ。決め球こそないが、ボールを散らしてコントロールで打たせてとる選手だ。球数を重ねても球威は変わらず、大崩れもしない。ただし、2〜3点の失点は覚悟するゲームをしなければならない。

——今日は、打ち勝つ必要がある。決まりだ。

店の看板に目をやると、ホタテの刺身があった。今日のオススメだ。打撃コーチがホタテの調子の良さを伝えている。

こりゃ起用しない手はない。ホタテは長打力こそないが出塁率が高い。調子がいいならなおさらだ。多めに盛られたワサビもいい。出塁したホタテを1つ先の塁に進めてくれる。

3回を投げて、ヒットは打たれるも得点は与えていない。投手の調子は上々だ。

「スイマセン、おかわりをください」

ここらで得点が欲しい。先制点だ。

この店のコロッケは手作り。ただのポテトコロッケだが、サクサク揚げたてだ。中身はふっくらとしていて、旨い。

まずはソースをかけずに。コロッケはしっかり味付けされていることが往々にしてある。ソースをかける前に、一度テイスティングだ。

よし、そろそろソースをかけよう。こいつは格別だ。

8回、2点は失ったが、緑茶ハイがよくふんばってくれている。コロッケの活躍もあってこちらも3点を得た。しかし1点のビハインドでは、このまま緑茶ハイにまかせるのは心許ない。

ならば継投策か。

8回はレモンサワーでつないで、9回は焼酎のお湯割。このまま1点を守り切るゲームにするならそれもありだろう。

だが、今日は打ち勝つと決めた。仮に緑茶ハイに見切りをつけるにしても、打って勝ちたい。

「すいません、麻婆豆腐を!」

辛い、熱い、そして力強い。

口内にたぎる熱を緑茶ハイでゴクゴクと冷やす。

「スイマセン、おかわりをください」

緑茶ハイ、このままオマエで行くぞ!

麻婆豆腐で再びチームが活気を取り戻したようだ。

ゲームは最後の局面を迎えている。向こうのテーブルから最後の注文をとりはじめた。

どうする? 緑茶ハイおかわりか?

とうとう私のところにも最後の判断をあおぐ声。私は意識的にゆっくりと、落ち着いて最後の一言を伝えた。

「半ライス、もらえますか?」

麻婆豆腐の快音がスタジアムにこだました。

 

本日のスタジアム:

浅草 水口食堂
http://asakusa-mizuguch.main.jp/

 

 

津田 啓夢

津田 啓夢

エディター。0歳で単身渡娑婆。一喜一遊、 一期は夢よただ狂え。ワクワクを食べて生きる人。演劇→写真→アート→メディア。企画、編集、動画、執筆&撮影、イラストのほか、イベントや広告企画なども幅広く手がける。趣味は手ぬぐい集め(地味)。

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