LGBT「生産性ない」の悲しみについて

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もろもろの顛末については省略するが、新潮45に杉田水脈議員が寄せた記事が非常に悲しみを伴うものになっている。今回はそこについて。なお本稿はLGBTについて何か見解を示すものではない。

件の文章は新潮45の特集「日本を不幸にする『朝日新聞』」に寄せられたもの。以下、特集記事の各タイトルでおおよそどういった内容かは掴めるはずだ。

〈第一部〉[現地取材 徹底検証]
放射能不安を煽って生れた
福島「甲状腺がん災害」/上條昌史
〈第二部〉間違いだらけの「台湾」情勢/林彦宏
「安倍嫌い」女性編集委員の「ダメな日本語」/古谷経衡
不公平な受験を生む「天声人語」商売/八幡和郎
読者誘って「婚活ビジネス」か/大江舜
もう止めるべきだろう「夏の甲子園」/小林信也
「LGBT」支援の度が過ぎる/杉田水脈

杉田議員の記事は、LGBTの生産性についてが主な内容ではなく、基本的にはリベラルと言われる陣営の施策やメディアの内容について言及している。それらにかみつく形で自説を披露し、LGBTへの支援はキリスト教系の欧米諸国とは違うやり方を説く。そして「生産性がない」という言葉が出てくる。

ほかの炎上と呼ばれる事態と同様、LGBTと生産性がない、という言葉がひとり歩きをはじめ、批判を集める形で広がり、現在もメディアの遡上にのっている。なお、私は杉田議員の主張に賛同しないし、主張の仕方も方向を定めず弾を放っているように見える。しかし、そのことは別として、メディアでは単語がひとり歩きして批判されているように感じている。

この一件が引き金となって大きな悲しみを生んでしまったと思うのは、LGBTに対するものではない。LGBTも含まれるがそうではない。

件の記事では、子どもを生み子孫を残すことを「生産性」と表現した。杉田議員は対象をLGBTとしているものの、この記事は結果的に、現時点で子どものいない人全てに何かしらの形で括弧くくりの「生産性」について考えをせまることになった。

子どもを産まない選択をした人も、子どもを授からなかった人も、未婚の人の多くもそうだ。悲しいことに子どもの有無が「生産性」でタグ付けされてしまったのだ。

私のようにのほほんと生きているだけの人ならば、さして気にすることはないかもしれない。しかし、産まない選択をした人、授からない人、機会に恵まれない人の多くが「生産性」という言葉で、事実上の負の烙印を押されてしまった。

これが時に大きなクイとして、また小さなトゲとして心に食い込んでいく。括弧くくりの「生産性」は、子どもの有無が断絶をも生むきっかけになる可能性がある。心に食い込んだものが近隣との共存をはばむ要因になるかもしれない。

皆、置かれた状況の中で幸せになろうとする。人よりちょっとだけ、自分が幸せであったらいいな、なんて思うこともしばしばあるだろう。今回の「生産性」のタグは根深く心に食い込んで、人の幸せを将来にわたってむしばむような気がするのだ。私はただ、そのことが悲しい。

津田 啓夢

津田 啓夢

エディター。0歳で単身渡娑婆。一喜一遊、 一期は夢よただ狂え。ワクワクを食べて生きる人。演劇→写真→アート→メディア。企画、編集、動画、執筆&撮影、イラストのほか、イベントや広告企画なども幅広く手がける。趣味は手ぬぐい集め(地味)。

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