『人を動かすナラティブ』を読んだ

「ナラティブ」とは、物語や語りを意味する言葉だ。巧みに操ることで、人心を掌握しうる技術として、情報兵器の文脈で最初に知った。この本はそうした危険性だけでなく、ナラティブに人が動かされる仕組みや、その機…

さっきからロイヤルロイヤルうるさい

何となく電車に乗って終点駅の知らない街にやってきた。特に用事はなかったけれど、せっかく来たのだからどんな場所か見てやろう。そんなつもりでいた。 改札を出ると目の前に小さなフードコートがあった。軽食のテ…

焼き芋論争の行く末、街角の3分間事件簿

午前中の仕事を終えて、お昼ごはんを求めて街に出た。自転車にまたがると、すぐに公園で遊ぶ子供達の声が聞こえてきた。 日があるうちは暖かいが、日陰は寒さが気になる。すっかり秋めいてきた。そんなことはお構い…

深夜そば、うどん

深夜の立ち食いそば屋は、おばちゃんがネギを刻む音とラジオの音だけが聞こえた。音の邪魔をしないよう「春菊、そばで」とだけ伝えた。 そこへ道路工事の警備をしていた小柄のおじいさんが入ってきた。 おじいさん…

ダムド(仮) 02

ジョナサンとの出逢い 「アサマ、高等教育はどうするつもりだ?」  奉仕労働に入ってしばらく経ったころ、労働監督官に聞かれた。作業は毎日ヘトヘトだったが、いくらかそれにも慣れてきた頃だ。  労働監督官の…

ダムド 02

ジョナサンとの出逢い 「アサマ、高等教育はどうするつもりだ?」  奉仕労働に入ってしばらく経ったころ、労働監督官に聞かれた。作業は毎日ヘトヘトだったが、いくらかそれにも慣れてきた頃だ。  労働監督官の…

ダムド (仮) 01

地獄に堕ちた野郎ども  本当はどこでもよかった。たまたま就職先が「お国」だったもんだから、安定収入の官僚殿なんて冷やかされるが、この国の就業労働人口の約半分は国の関連機関で働いているんだ。とくにほめら…

ダムド 01

地獄に堕ちた野郎ども  本当はどこでもよかった。たまたま就職先が「お国」だったもんだから、安定収入の官僚殿なんて冷やかされるが、この国の就業労働人口の約半分は国の関連機関で働いているんだ。とくにほめら…

隣席でいい大人の息子と母親がもめている。

カフェの隣席でいい大人の息子と母親がもめている。すぐ隣でなくとも聞こえる大きな声だった。 横目でちらちらと確認しただけだからわからないけれど、いい大人の息子は子どもっぽい口ぶりではあるものの、たぶん3…

隣席でいい大人の息子と母親がもめている。

カフェの隣席でいい大人の息子と母親がもめている。すぐ隣でなくとも聞こえる大きな声だった。 横目でちらちらと確認しただけだからわからないけれど、いい大人の息子は子どもっぽい口ぶりではあるものの、たぶん3…

カレーライス(仮)03

 正直、あまり悩んだことがない。子どもの頃から大きな夢を見たこともなくて、どちらかと言えばノンビリ屋と言われることが多い。気心の知れた友達からは「ノンビリ」ではなく、ボンヤリと言われたし、学生時代の先…

カレーライス(仮)03

 正直、あまり悩んだことがない。子どもの頃から大きな夢を見たこともなくて、どちらかと言えばノンビリ屋と言われることが多い。気心の知れた友達からは「ノンビリ」ではなく、ボンヤリと言われたし、学生時代の先…

カレーライス(仮)02

 テレビの天気予報が夕方から雨になると言っていた。雨になるのはいいが、夕方からの雨に備え、日中ずっと傘を持ち歩くべきなんだろうか。アイスコーヒーの氷が音を立てストローをゆらした。  鈴木祐二はグラスを…

カレーライス(仮)02

 テレビの天気予報が夕方から雨になると言っていた。雨になるのはいいが、夕方からの雨に備え、日中ずっと傘を持ち歩くべきなんだろうか。アイスコーヒーの氷が音を立てストローをゆらした。  鈴木祐二はグラスを…

カレーライス (仮)01

「ねぇ、これぐらい?」「どれ? あ、そんなもんでいい。もっとデカい方がいいか?」「どうだろ? ま、いいんじゃない」  松男は「まかせる」とだけ言うと、再び玉ねぎのみじん切りに取りかかった。キッチンから…

カレーライス (仮)01

「ねぇ、これぐらい?」「どれ? あ、そんなもんでいい。もっとデカい方がいいか?」「どうだろ? ま、いいんじゃない」  松男は「まかせる」とだけ言うと、再び玉ねぎのみじん切りに取りかかった。キッチンから…