blur button classic close up

津田啓夢(23)、カッコの中身

少し前、記者に氏名の後ろにどうして()をつけないのか質問された。

新聞記事や週刊誌などの記事にある

津田啓夢(23)

というやつだ。通常それは年齢を意味する。

記者からすれば、長年付けてきたというのもあるし、年齢も情報の1つだから少しでも情報を付加する意味で(年齢)を付けるべきではないか? どうしてこのオッサンは(年齢)をつけないでと指示するのだろうか? そう思ったのだろう。

自分が長く編集や記者をやっていた出版社では(年齢)をつけなかった。ただ、その当時からよそで見かける(年齢)には疑問を持っていた。

(年齢)がもたらすもの

記事中に(年齢)があった場合、情報としてどのような価値があるか。

新聞や週刊誌などの活字中心のメディアは、テキストの中でいかに絵をイメージさせるかが重要になってくる。その際に(年齢)も少なからず意味がある。

・津田啓夢(19)なら、若いと思う人が多いだろう
・津田啓夢(34)なら、働き盛りとか?
・津田啓夢(76)なら、シニア世代と感じるはずだ

(年齢)は前後の文脈を捕捉する情報として意味をなす。

事件・事故・犯罪・社会貢献など、よく見かける記事を想像して前述の(年齢)をあてはめれてみて欲しい。同じ情報であっても(年齢)があることで、受け取った情報の意味が少しずつ変化していくはずだ。

(年齢)にはちゃんと意味がある。

(年齢)は誰のため?

一方で、最近のテキストにはほぼ写真がある。記事中の登場人物の写真が掲載されている場合、(年齢)を出すことがイメージを増幅させることはない。

芸能記事の(年齢)で思うことと言えば、写真と年齢から「この人、年とったな」とか「えっ! こんなに若々しいのに!」とか、そんなことばかりではないだろうか。記事の内容をすっかり無視して、そんなことばかりだ。誰しも自分のゲスさに直面したくはない。

最近では(年齢)で本来実現していた、情報を付与してイメージを増幅させ「より伝わる」を目指す。そこに繋がっていない感じがするのだ。

そんなこともあって(年齢)は付けないでいる。それが必要な場合もあるはずなので、必ず付けないと決めているわけではない。

別の課題

質問された時はたまたま動画の記事だった。女性の起業家に新しい取り組みについてインタビューしたものだ。

たとえば中高生、たとえば高齢者とかであれば年齢を付けることに意味があると思った。

・JC起業家の新たな挑戦、JKだともう遅い?
・おばあちゃんが古希に起業したワケ

思いつきタイトルだが、なんだか気になってこないだろうか。世代に意味がある記事の場合、こういうタイトルで記事中の氏名の後ろに(年齢)があると、すんなり入ってくる。

けれど、まぁ一般的に就業している年齢の人で、かつ本人が顔を出していると(年齢)に情報価値がない。

まして、そのときの記事は女性の起業家だった。年齢を出すと余計なノイズになる場合がある。

Webの記事はSNSで流通していく。流通の過程でいろいろな人の目に触れ、いろいろな言葉がWebに拡散、再生産されたかのように広がっていく。

女性氏名(年齢)の場合、とくに内容とは関係ないところで美醜が話題にされたり、結婚や子供の有無が取り上げらたりしがちだ。記事の意図とは異なる情報の商品化がなされてしまうことがある。

そうした意図しない情報の商品化によって、取材対象を傷つけたくはない。メディアに露出する以上、ある程度の多様な意見を目にする覚悟は必要ではある。ただ、本質とは言いがたいその手のノイズはメディア側で配慮した方がよいのではないかと考えている。

そんなことを説明すると、記者は「勉強になった」と納得してくれたようだった。

長年やってきたことだから、違和感もあるかもしれない。けれど、僕らはずっと考え続ける必要があり、絶えず伝え方をアップデートしていかなければならない。自分が伝えたことも、現時点での考えでしかない。

飛躍してみる

なお、タイトルの津田啓夢(23)の()内は年齢ではない。大好きなマイケル・ジョーダンのナンバーってだけだ。

電車に乗っているとき、大学生らしき女子二人がスマホ片手に新田真剣佑さんの話をしていた。おそらく何かの記事について話していたのだが、そのとき

「この数字なに?」
「ん、数字?」
「マッケンユーのこれ」
「え、それトシだよ。なんだと思ったの?」
「え、わかんない。なんか数字w」
「数字ww」

みたいな感じで盛り上がっていた。もしかすると、氏名のあとの(数字)が年齢を意味する記号だと通じない世代が出てきているのかもしれない。

だとすれば、氏名(数字)の記号を年齢に限ってみることもないかなと思う。

好きなスポーツ選手の背番号とか、持っているあめ玉の数とか、フォロワーの数とか、好きに(数字)を楽しんでみてもいいのかもしれない。

メディアの編集長と事業責任者と、会社の広報を兼務している老害

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です