「お寿司を食べに行く」と言えば、回転寿司のことをさすのではないか。回らない寿司と言わねば、カウンターのそれだと思わない。いや、わりとマジで。
ここは似たような暮らしぶりの人だけ読んでいると信じて続ける。2020年はついに、カウンターの寿司屋で座って食べることが一度もなかった。寿司をカウンターで食べるのは、立ち食い寿司くらいだ。
今回は、そんな寿司で酒をやっつける話。
まずは好きに食べる
ビールと贅沢な食事は一口目が一番おいしい。喉が渇いて、お腹が減っていることに勝るものはない。
ビールをガリとアラ煮でやっつけて、早々にチューハイにシフトした。
この日のひと皿は、ヒラメのえんがわ。回転寿司では見かけることが少ないキャストだ。
天然のヒラメなら高級魚だが、おそらく養殖物なのだろう。それでも食感といい味といい、いつもとは違った味わいだ。
回転寿司のえんがわと言えば、カラスガレイなどが一般的だ。脂が強く独特の風味があり、ヒラメのえんがわとは似ていない。脂臭さを抑えて芽ネギや紅葉おろしなんかと合わせたものは、とてもおいしい。
ちょっと贅沢なひと皿で満足すれば、あとは酒のアテとして寿司を攻略していく。
軍艦を探す
この店には子持ち昆布の軍艦があった。おあつらえ向きに細かくなっている。上から醤油をサッと垂らして、ちょこちょこと上ものをつまんでいく。
プチプチした食感が楽しい。はずむようにチューハイも空にして、お湯割りとあいなった。
ここで注意しなければならない。我々呑み助には、明日に向かってこぎ出す舟が必要なのだ。つまむのは上だけにして、軍艦自体は残しておいた方がいい。
お湯割りあたりに手を出す頃になれば、それなりに酔いも回っている。もう立派なアテはいらない。
塩辛軍艦こそ形勢逆転の機
回転寿司で注目したいのはイカの塩辛軍艦だ。たいていの寿司屋で安い。贅沢でこだわりの寿司屋では、自家製塩辛を置いていることもある。そうなってくると、立派な値段の場合もある。
そこそこな店がいい。安いチェーン店よりも高いこだわり店よりも、そこそこな店の塩辛がいい。この店は理想的だ。
塩辛はその名の通り、塩辛い。たいていの場合、軍艦の甲板を埋めるようにのった塩辛はそのままだと塩辛い。
ここに先ほどクルーが下船した軍艦が必要になる。一方の軍艦に溢れる塩辛をのせてやろう。今の時代、密は避けた方がいい。
さびしい軍艦も急に活気が出てくる。今回は子持ち昆布でやったが、より一般的なネギトロ軍艦でやることが多い。
ちょっとしたことで、塩辛軍艦が倍になった。お湯割りで塩辛をやっつけて、シメに塩辛軍艦の4連発。最後にアツアツのお茶で流せば、なかなか立派なものである。
貧乏くさい話だが、回転寿司は戦略性に富んでいる。