ストレートな青春映画だった。ストレートに撃ち抜かれ、涙がポロポロ出て少し恥ずかしかった。エンドロールで正気に戻ると、あちこちから鼻をすする音が聞こえた。きっと、撃ち抜かれた人も多かったはずだ。
Codaは、ストーリーは非常にまっすぐだが、設定は複雑だ。家族全員、聴覚に障害がある中、娘のルビーだけが唯一の健聴者。小さな頃からはルビーは社会と家族をつなぐ通訳を担い、家族の中では孤独を味わってきた。
家業の漁業を手伝いながら学校に通うルビー。学校では、気になる男の子をつい目で追ってしまう、そんな年頃だ。物語は彼女の唯一の楽しみといっていい歌を中心に、葛藤しながら人生を選択していく姿が描かれる。
歌が好き。家族も好き。揺れ動くルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌声には驚いた。技術よりもむき出しに近い表現力が声にやどっていた。作中に流れるジョニ・ミッチェルの名曲にふるえない人はいないだろう。
あとから知ったが、家族を演じた俳優陣は皆、耳が聞こえないのだという。手話で通じてやりとりする彼らの生っぽさは、そういうところに現れているのかもしれない。
Codaは、サンダンス映画祭で好評を得た。インディペンデントの映画祭として、近年は買い付けの場として話題になることも多い。映画に新しい風を吹かせるような作品が出てくる場所でもある。アカデミー賞にもノミネートしているので、もしかすると獲るのかもしれない。
音楽っていいな。青春っていいな。家族っていいな。心が洗われるような、きれいな涙を流した。